秘技!

やらかし

皆さんは、今までどのような仕事や経験をされてきましたか。中には筆舌に尽くしがたい経験をされた方もいるでしょう。そうした体験を元に得たものって、人それぞれありますよね。

本日は、私が仕事でやらかしつつも獲得していった秘技をご紹介したいと思います。

秘書の「ひ」は秘密の「ひ」

若い頃になりますが、私は研究所で某えらーい先生の秘書をしていました。

大変にお偉い八木カエル先生さま(仮名)

秘書というのは、ハイヒールでかつかつを想像させますが、完全な裏方仕事であり、一言で言うならただの雑用係です。

まず秘書が気をつけるべきは、仕事上先生のプライベ―トをかなり知ることになるので(銀行口座や交友関係、機密事項など)、それらを決して口外せず、ぐっと心の中で処理していくことです。

そして、ちょっとした秘技も必要です。

マグカップは置き去りにしてはならぬ!!

当時、秘書専用部屋はなく、私は八木先生の居室の一角に机を構えていました。

居室の隣には、会議室と給湯室。

ざっくりこんな間取り

仕事が終わると、私は給湯室でマグカップを洗って、水切りカゴにカップを入れたまま帰っていました。

ある時、洗っておいたはずの私のカップに何かが入っていました。
それも山盛りに。

これ これがいっぱい

なんだこれ

給湯室は私と八木先生しか使用しないので、犯人は八木先生で間違いない。
でも先生のカップは水切りカゴにふせられたまま。

・・・これは一体?

給湯室の隣の会議室には9時から始まる会議の出席者がずらっと勢ぞろいし、八木先生が入ってくるのを待っていました。

みんなえらそう

私はその会議室の前を通り、先生の居室にマグカップを持って行きました。

 先生、これは?

ああ、それ?キャップだよ、キャップ

キャップって何の?

試験管のキャップ。
微生物の。ミトコンドリアが入ってた試験管のキャップ

ミトコンドリアが入っていた試験管のキャップ…
ミトコンドリアが入っていた試験管のキャップ…

これっ??

先生、これ私のマグカップなんですけど!

知ってるよ。

知っているよ——?!

ンガーッ

大丈夫、洗ったから。洗っていれたんだから

なんで私のカップに入れるんですか。

だって入れる物がなかったから。

なにー自分のカップがあるくせに!!!!!!

私は、先生の目の前で、そのマグカップを振りかぶって、ゴミ箱へごんっと投げ捨てました。

ギャーギャー騒いでいたせいか、会議室からドヤドヤ人が出てきました。そうなればいつも通り、すーんとすまして机に向かい、仕事を始めるのみです。
秘書たるもの、どんな時でも黒子に徹して、騒いではなりません。

すーん、この姿勢が大事。

そして、ああ、なるほど、マグカップは置いて帰ってはならぬのだという教訓を得、かつ、歯ブラシ置いてなかった自分を心から褒め称えたのでした。

怒りのポイント、沸点は背中で見極めよ

八木先生様は、決して人格者ではなく、大変自分勝手な性格でした。
頭が良い所以外良い所ないよね等と陰口も叩かれていました。

そして失礼なことを言っては、頻繁に人を憤慨させます

私は裏でグチグチいう奴よりよっぱど良いと思っていましたが、そうは思わない人も数知れず。

先ほども書きましたが、八木先生は秘書を別部屋に置かないスタイル。
だから先生のお話や来客も、机に向かった状態で背中で受け止めなければなりません。

いつものことですが、先生が失礼発言を来客相手に連発し、そろそろ相手が怒り始めるなと思う瞬間がやってきます。必ずやってきます。

特に、ハハハハ…という乾いた笑いの後なんかにそれは訪れます。

そしてこの、ここだっという瞬間に、すっと席を立って、部屋から出て行くことが大切です。

このタイミングを見誤ると、怒鳴り合いを背にずっと画面に見入ったふりするか、ケンカ中の二人を横切り、部屋からしれっと出ていくような状態になってしまいます。

だってこんな最中はじっくり正面から見たいじゃん

簡単そうですよね?

いやいや、自分の席の真後ろで、顔を見ずに、人が怒り出す瞬間を見極めるというのは至難の業、我ながらあっぱれです。

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